失業保険の手続きを行わない方がいい場合

失業保険の手続きを行わない方がいい場合 失業保険(雇用保険)の手続き
スポンサーリンク

退職した後に失業保険(雇用保険)の手続きを必ず行わなければいけないわけではありません。退職する理由や雇用保険の加入期間など、様々な要素を検討した上で失業保険を受給するのか決めた方がいいでしょう。

この記事では、失業保険の受給手続きを行わない方がいい場合や、手続きを行うことによるデメリットについて解説します。

失業保険を受けることによるデメリット

人によっては再就職を急いだ方がいいかもしれません。まず失業保険を受けることで発生するデメリットを整理しましょう。

  1. 失業保険を受けると雇用保険の加入期間がリセットされる
  2. 支給がすぐに開始するとは限らない
  3. 失業保険を受ける期間が長いほど就職に不利になりやすい
  4. 生活リズムが乱れる

失業保険を受けると雇用保険の加入期間がリセットされる

失業保険の支給を受けるには、雇用保険の加入期間が1年または6ヶ月以上必要です。
自己都合退職の場合、退職前の2年間の間に雇用保険の加入期間が1年以上あることが条件です。加入期間は1年以上を境に、1年以上10年未満、10年以上20年未満といった区切りで支給日数が増えていきます。

一般受給資格者

また、会社都合退職の場合は、6ヶ月以上1年未満、1年以上5年未満、5年以上10年未満、10年以上20年未満とより短い区切りになります。

特定受給資格者や特定理由離職者

一度でも失業保険の支給を受けると雇用保険の加入期間がゼロになるため、次に失業保険を受けるには再就職先で一定期間雇用保険に加入する必要があります。自己都合退職の場合、1年と経たずに辞めてしまった場合は、失業保険を受けられません。

●失業保険をもらった場合、雇用保険の加入期間はリセットされる

雇用保険の加入期間がリセットされる場合

●失業保険をもらわずに再就職した場合、雇用保険の加入期間は引き継ぎされる

失業保険をもらわずに再就職した場合、雇用保険の加入期間は引き継ぎされる

雇用保険の加入期間は、失業保険を受けなければ次の仕事に引き継ぎすることができます。加入期間が長いほど失業保険の支給期間も長くなります。すぐに再就職するつもりであれば、失業保険を受けない選択もありだと言えるでしょう。

失業保険がすぐに開始するとは限らない

失業保険の手続きを行ってから、実際に支給が開始されるまでの期間は、退職の「理由」が大きな要因となります。自己都合で退職した人には給付制限がつき、3ヶ月もの間失業保険は支給されません。3ヶ月経って、働く意欲があるけれど、それでも仕事を見つけられていない場合に支給されます。

自己都合退職者の失業保険の受け取りの流れ

手続きに時間もかかるので、退職後すぐに手続きを行ったとしても、実際に支給が開始するのは約4ヶ月後になるでしょう。つまり自己都合退職の人は4ヶ月の間、貯金を崩しながら生活しなければいけないことになります。貯金が十分にある場合や家族の収入で働かなくとも大丈夫な状況でもない限り、失業保険をもらうよりも再就職先を探した方が現実的と言えるでしょう。

一方、会社の倒産など「会社都合」での退職の場合は、1ヶ月程度で支給が開始されます。こちらの場合は失業保険の手続きを行い、ゆっくりと再就職先を探すのもいいでしょう。

失業保険を受ける期間が長いほど就職に不利になりやすい

採用する会社からすると無職の期間が長い人は、採用しにくいことは言うまでもありません。働く意欲があまりない人を採用しても、またすぐに辞めてしまう可能性があります。

仕事のための資格の勉強をしていたなど、前向きな理由がない限り、無職の期間が長い人は就職で不利になりやすいでしょう。

また、失業保険の期間いっぱいまで再就職先を探さずに過ごした場合、本人に焦りが出てきます。会社をじっくりと検討する余裕がなく、受かればどこでもいいという考えになり、無事に再就職できたとしても、やっぱりこの会社ではなかった、とすぐに辞めたくなるかもしれません。

退職理由と雇用保険の加入期間によっては、失業保険を180日(6ヶ月)など長期間もらうことができますが、無職の期間が長いほど再就職の際はしっかりと準備しておきましょう。

生活リズムが乱れる

会社で働かない期間は、自分でスケジュールを組んで何をするのか決め、実行しなければいけません。会社勤めの間は会社によって勤務時間が決められ、それに応じた起床時間、帰宅時間などが規則正しくできていたはずです。会社による強制力は非常に強いものです。

しかし、失業保険をもらっている間は、自分でスケジュールを組まなければいけないので、簡単に生活リズムが乱れてしまうでしょう。自分で組んだスケジュールには強制力がなく、すぐに守れなくなります。そのうち再就職先を探すことすら面倒になってしまうかもしれません。

このような状況にならないためには再就職の意欲がある内に積極的に就職活動を行い、再就職先を決めてしまうことです。自分の自己管理能力をよく考えて決めてください。

ここまで失業保険をもらった場合のデメリットを解説しました。
次項からは、失業保険の手続きを行わない方がいい場合を具体的に見ていきます。

失業保険の手続きを行わない方がいい場合

退職前に次の仕事を見つけている場合

再就職先を見つけてから退職すれば理想的です。入社時期の関係などで再就職まで大きく期間が空かない限り、失業保険の手続きを行う必要はないでしょう。雇用保険の加入期間は継続できるので、失業保険は次に退職することがあればその時に利用しましょう。

継続してアルバイトやパートで働くつもりである場合

失業保険の申請はできますが、7日間の待期期間に収入を得ている場合は失業保険の受給が先延ばしになります。待期期間中はアルバイトをすることはやめましょう。

自己都合退職者が待期期間中に仕事をした場合

待期期間終了後は、アルバイトをしてはいけないというわけではありませんが、「就職している」と見なされると失業保険が減額されたり、給付が終了するということがあります。「就職している」状態の定義は明確ではありませんが、雇用保険の加入条件に当てはまる場合(「1週間の所定労働時間が20時間以上の場合」および「31日以上の雇用が見込まれる場合」)には間違いなく「就職している」と判断され、失業保険の給付が終了になります。

また、アルバイトやパートで収入を得た場合はハローワークに報告しなければいけません。収入を得ただけなら失業保険を減額されるということはありませんが、失業保険の受給中は毎回報告する義務があります。意図的に報告しなかったと判断されると不正受給となり、受け取った失業保険の3倍の額を返還する場合もあります。

継続してアルバイトやパートをするつもりなら、失業保険の受給はせず、雇用保険の加入条件を満たして加入期間を増やすという選択もあります。

しかし、雇用保険の加入条件を満たさない短時間のアルバイトなら、待期期間終了後に失業保険をもらいながらアルバイトをするのも報告を怠らなければ問題ありません。

反対に、こんな時は失業保険を申請するべき

病気などでしばらく働けない場合

失業保険は働く意欲のある、健康な人のための制度です。働ける状態にない人の場合は失業保険の対象者になりません。ただし、失業保険の受給期間を最長3年間延長することができます。

妊娠・出産・育児、親の介護、病気やケガなどは延長が認められます。延長の手続きは、働くことができない状態が継続して30日を超えた日から1ヶ月以内に「受給資格者証」と「受給期間延長申請書」をハローワークに提出しましょう。退職直後に病気など失業保険の手続きができなかった場合でも、働くことができない状態が継続して30日を超えた日から1ヶ月以内に離職票を持っていけば手続き可能です。

この手続きによって、本来の受給期間1年間に働くことができない日数分を加えた期間が受給期間となります。受給期間1年を過ぎても働ける状態になってから失業保険を受給することができます。

また、求職の申し込みを行った後に病気などで15日以上働くことができない状態になった場合は、「傷病手当」という制度を利用できます。

失業保険の受給期間中に再就職したが、すぐに退職した場合

この場合は受給可能期間1年間の間であり、かつ失業保険の支給日数が残っていれば、再び失業保険を受給できることがあります。条件は次のようになります。

  1. 再就職時に失業保険の支給日数が残っていること
  2. 失業保険の受給可能期間である1年が過ぎていないこと
  3. 再就職先で新しい受給資格が発生していないこと
  4. 再就職にかかる離職票を提出すること

例えば再就職した時点で支給日数が60日残っていれば、再就職先がまったく自分にあっておらず1ヶ月経たずに辞めたという場合に、残っている失業保険の日数だけ支給を受けることができます。

支給日数が90日で、失業保険を30日分支給された後、再就職したが1ヶ月で辞めてしまった場合
支給日数が90日で、失業保険を30日分支給された後、再就職したが1ヶ月で辞めてしまった場合

この場合は再就職先での失業保険の受給資格が発生していないので、残っていた60日分の失業保険の支給を受けることができます。

再就職する意思はあるが、自分のスキルで良い就職先が見つかるか不安な場合

早く再就職したいけれど、今の自分ではスキル面で就職先や給与の不安を抱えているという人もいると思います。こんな時は失業保険の受給者が利用できる「職業訓練(ハロートレーニング)」を受講してスキルアップをするといいでしょう。

職業訓練を受講すれば、失業保険をもらいながらスキルアップができ、さらに給付金額に訓練手当が上乗せされます。また、通常なら失業保険の支給開始には3ヶ月の給付制限期間があるため、3ヶ月経過しなければ支給されませんが、職業訓練の受講者は給付制限期間が解除され、すぐに支給が始まります。職業訓練の定員は少ないですが、受講できるなら利用しておくといいでしょう。

●職業訓練受講時の失業保険の支給開始日

職業訓練受講時の失業保険の支給開始日

まとめ

このように失業保険を受給した方がいいか、そうでないかは人それぞれです。

自己都合退職の場合は、3ヶ月の給付制限があるので、再就職先が見つかっていれば失業保険の手続きをする必要はないでしょう。
しかし、再就職先のあてがなく、貯金も少ない場合は判断が難しいところです。失業保険の手続きをしても支給開始は給付制限後なので、アルバイトなどで収入を得ながら就職活動をするか、とにかく早く再就職先を決める必要があります。失業保険の受給をすると雇用保険の加入期間がリセットされることも考慮しなければいけません。

会社都合の場合は、すぐに失業保険の手続きを行って問題ないでしょう。7日間の待期期間が終われば支給開始されますので、就職活動に専念できます。また、受給期間が残っている内に再就職先を決めれば「再就職手当」の対象になる場合があります。

まとめると、会社都合退職はすぐに手続き、自己都合退職の場合は退職する前によく調べて決定する、といったところでしょう。自分で制度をよく理解した上で、失業保険の手続きを行うかどうか判断してください。

タイトルとURLをコピーしました