失業保険と似た制度として生活保護があります。両者にはどのような違いがあるのでしょうか。失業保険と生活保護の違いや条件、注意点について解説します。
失業保険とはどんな制度?
失業保険は「働く意欲がある人が新しい仕事を見つけるまでの生活資金」です。「雇用保険」と呼ばれることもあります。正確には雇用保険制度の中の「基本手当」という給付金を指しており、一般に失業保険という言葉が浸透しているため、当サイトでも主に失業保険と呼んでいます。
失業保険は、万が一失業してしまっても、就職活動に専念できるように当面の生活費は国から支給してもらえる制度です。生活保護とは違い、一定の条件を満たせば生活に困窮してなくても受給することができます。
失業保険を受けるための条件
失業保険(雇用保険)は入社すると加入することになり、最低でも1年以上働くことが給付を受けるための条件となります(会社都合で退職した場合は6ヶ月以上)。
また、パートやアルバイトでも勤務時間によっては失業保険に強制加入となるため、受給できる場合があります。
失業保険を受給するには、就職したいという意思が必要であり、ハローワークで就職活動をしている実態が認められなければいけません。仕事情報を調べているだけでは就職活動と見なされないので注意してください。
生活保護とは違い、年齢や保険加入期間によって支給される期間が決まっています。仕事が決まらないからと言って、長期間支給を受けるということはできません。
失業保険を一度受給すると、次に受給を受けるには、さらに1年以上(条件によっては6ヶ月以上)失業保険に加入する必要があります。このため、失業後にすぐに再就職が決まった場合は、失業保険を受け取らなずに次回に持ち越した方がいいでしょう。
生活保護はどんな制度?
たとえば、病気やケガで働けなくなったり、介護や育児などさまざまな理由で生活が困窮したりした場合に、生活資金を保障してくれる制度を生活保護といいます。
日本では「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という日本国憲法の第25条に基づいた、生活保護法という法律があり、最低限の生活ができる保障制度が定められています。
生活保護は「世帯単位」で行い、世帯員全員が資産や能力などあらゆるものを駆使しても生活の維持が困難な場合に対象となります。
失業保険
次の就職先を見つけるまでの生活資金
生活保護
生活が維持できないほど困窮している場合の保障
生活保護を受けるための条件
生活保護を虚偽の申請で不正受給されないためにも、生活保護の条件は厳格に定められています。
最も重要な条件は「自分が働きたくても働けない」というものです。具体的には母子家庭で働きに行けなかったり、ケガや病気で動けなかったりする状況のことです。
次に資産を持っていないことも条件です。資産をすべて売却しても、それでも生活の維持が難しいことが条件になります。貯金や土地、生命保険や高価なものなどを持ったまま生活保護を受けることはできません。
また援助してくれる親族や身内がいないことも条件のひとつです。「働けるけどいい仕事がなかなか見つからない」などは理由にはならず、生活保護の対象外です。
一方、失業保険は「働く意欲がある人が新しい仕事を見つけるまでの生活資金」ですので、生活保護とは目的の異なる制度であることが分かりますね。
生活保護で支給される費用
以下のように「生活に必要な費用」が対象となっています。趣味や旅行のような娯楽には支給されません。
生活を営む上で生じる費用 | 扶助の種類 | 支給内容 |
日常生活に必要な費用 (食費・被服費・光熱費等) | 生活扶助 | 基準額は、 (1)食費等の個人的費用 (2)光熱水費等の世帯共通費用を合算して算出。 特定の世帯には加算があります。(母子加算等) |
アパート等の家賃 | 住宅扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
義務教育を受けるために必要な学用品費 | 教育扶助 | 定められた基準額を支給 |
医療サービスの費用 | 医療扶助 | 費用は直接医療機関へ支払 (本人負担なし) |
介護サービスの費用 | 介護扶助 | 費用は直接介護事業者へ支払 (本人負担なし) |
出産費用 | 出産扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
就労に必要な技能の修得等にかかる費用 | 生業扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
葬祭費用 | 葬祭扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
(出典:厚生労働省HP)
生活保護にはデメリットがある
生活保護を受けた世帯は、原則として貯金することはできません。また、新たに借金などをすることもできませんので、ローンでものを買ったり、クレジットカードを申し込んだりすることもできなくなります。
自動車も資産扱いされますので、処分しなければいけません。車に乗ることもできなくなります(障害を持っている場合の通勤、通院などに必要であれば使用可能)。
また、毎月の収入状況の報告や、年数回の福祉事務所のケースワーカーとの面談など、定期的な手続きもあります。
失業保険と生活保護を同時に受けることはできる?
失業保険の給付金は課税対象外となるものの、厳密には収入扱いとなるので、生活保護と失業保険を二重に受け取ることはできません。しかし、それでも生活が困難な場合で、失業保険支給額を生活保護費が上回る場合は、差額を支給される例外もあります。まずは地域の福祉事務所に相談してください。